作業療法士としての国際協力

私が作業療法士として活動した病院は、タンザニア・キリマンジャロ・モシにあるリハビリテーションセンターでした。

ケニアとの国境近くに位置する、人里離れた村で首都からは離れていたため、患者さんの中には片道3時間をかけて来られる方もいらっしゃいました。

敷地は広大であり、東京ドーム1つ分程度あったかと思います。多い時には100名以上の患者さんが来院されました。

患者さんの疾患は、身体障害・精神障害・知的障害と様々であり病名を付けるのが難しい症例も多くありました。

その中で、現地スタッフや多国籍の方々と意見を出し合い、評価やプログラムを立案していく作業はとても有意義でありました。

アジア人は見かけることはなく会話は英語であり、患者さんはスワヒリ語を中心に話されておりました。

その為、現地の医師、看護師、リハビリスタッフ、メディカルスタッフの方々にスワヒリ語、文化、タンザニアの医療の現実について親切に教えて頂きながら活動をしました。

生活スタイルや文化も異なる為、疾患の捉え方や目標も日本とは異なり、生活の質(QOL)に対する考え方など、学びになることが多くありました。

新鮮だった異文化での生活

私生活では、ホームステイで他の病院で活動する多国籍の方々と共同生活をしました。

日本の生活と比べると不便なこともありましたが、周りの人と協力し楽しみながら生活を送ることができました。

エアコン・扇風機・洗濯機・水道・お風呂など、日本で生活している中で当たり前と思ってしまっていた物に対してのありがたさを実感しました。

休日は、現地の人や活動メンバーと市場に買い物や料理や外食、連休には1泊2日でサファリやマサイ族の村を訪問しました。

野生のライオン、キリン、ゾウはとても迫力がありアフリカならではの自然を堪能しました。

お互いの文化や習慣など情報交換し、異国の文化の良さや日本の文化の良さを再確認しました。

食事の際には手を合わせ「いただきます。ごちそうさまでした」は、私が帰国する頃には、ホームステイ先、病院先の方々も私より進んで行うようになっていました。

共に時間を過ごす中で、異なる文化を共有することは新鮮であり楽しく興味深かったです。

タンザニアが私を成長させてくれた

アフリカでの活動は、医療格差を感じることや、時には目を背けたくなることもありました。

しかし、先進国の日本の医療にはない工夫や知恵が多くありました。

自助具や歩行器など、細かい物から大きな物までなければ自ら作るという発想は、作業療法士として4年目である私にとって感心するばかりでした。

いかに日本という国が豊かで、物に溢れているかを実感しました。

一概に豊かさは測れるものではなく、様々な形があることを頭では分かっているつもりでしたが、改めて考えさせられました。

その人らしさとは一人ひとり異なるように、幸福度や満足度はその人自身が感じるものだと改めて思いました。

タンザニアには医療の他にも魔術・神話・言い伝えなど、医学ではまだ解明されていないものがたくさんありました。

エビデンスに基づいた医療の重要性を痛感すると共に、まだ解明されていないものに対しても学びになりました。

医学は日々進化しており、医療発展に伴う弊害もありますが、実際にアフリカの病院で活動した経験は価値のあるものになりました。

活動先の病院、生活を共にしたメディカルスタッフとも、インターネットや手紙で交流を続けているので、またいつか訪れたいと思います。

今心から思うこと

「百聞は一見に如かず 。百見は一考に如かず 。百考は一行に如かず 。百行は一果に如かず 。百果は一幸に如かず 。百幸は一皇に如かず」

よく知られていることわざですが、実にこのことであると強く思いました。

活動を決断するまでには悩むことも多くありましたが、活動を終え改めて心から参加して良かったと思います。

そして、私の周りで関わって下さった全ての方々にとても感謝しております。

ありがとうございました。

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タンザニアで作業療法 中川智美

この体験談は、主観に基づいて綴られています。

その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。

ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。