長年の憧れの地へ

小さい頃から、ずっとアフリカの地に憧れていた。

アフリカ(その中でも比較的発展途上国)の現状をこの目で見て、体感した上で、獣医療を通して自分は今後何をできるのか考えたかった。

海外サイトを含む様々なボランティア斡旋サイトを検索し、単なるアニマルケアではなく獣医療ボランティアを提供しているプロジェクトアブロードに目が留まったのが最初である。

資金不足に一度は諦めていたものの、官民共同プロジェクトである「トビタテ!留学JAPAN」合格とともに1年の休学を決意。

1年の集大成として、ガーナへの獣医療ボランティアを選んだ。

枠に留まらずに取り組んだ活動

「犬猫のようなペットではなく家畜を中心に診たい」「ガーナ人のローカルな暮らしぶりを味わいたい」という事前アンケートの希望を汲んで頂き、派遣先はVeterinary Service Office -Akropongという丘の上のオフィスだった。

獣医師は1人しかいない。

主な活動は牧場への往診だ。

往診内容

往診内容を少し紹介しよう。

3,000羽のニワトリに、獣医師と私の2人でニューカッスル病ワクチンを打った。

ヤギの謎の大量死の原因を探るべく死亡解剖し、牧場主に原因と対策を伝えた。

子豚の去勢手術を行うこともあった。

他にも、ウサギやヒツジなどの寄生虫駆虫作業や、犬への狂犬病予防ワクチン接種等を行った。

もちろん、限られた薬品と医療道具、清潔とは言えない環境で、手際よく適切な処置をし、全種類の動物を全て診て回る必要がある。

さまざまな会議への出席

往診だけでなく、会議への参加もした。

週一回の牧場関係者や獣医療関係者が集まるジェネラルミーティングでは、登壇する機会を頂いた。

そこで私は、日本の家畜伝染予防法や衛生管理、HACCPという食品管理基準について話した。

社会経験もない大学生である私の話を真剣に聞き、多くの質問をしてくれることに嬉しさを感じた瞬間だった。

今、世界ではOne Healthという概念が浸透しつつある。

ガーナ東部のOne Health会議に、獣医部門代表として私も出席した。

感染症などガーナの人における医療問題の現状把握をすることから始まり、どうすれば改善されるのか、今後どのような活動をするべきかを話し合う。

参加者は、病院や保健所など人の健康に関わる機関の各代表者である。

獣医部門は、主に狂犬病対策について発言を求められた。

飼い犬へのワクチン接種は義務付けられているが、機能していない現状。

噛まれた人の届け出が全てされていなく、把握しきれていない現状など、狂犬病にまつわる多くの問題があることも知った。

一方、全員が一丸となって、人の健康を守ろう、ガーナを良くしていこう、という姿勢に非常に感銘を受けた。

屠畜場見学

次に、屠畜場見学について紹介しよう。

コフォリドゥアという、ガーナ東部の州都に3日間行き、屠畜現場を視察させてもらった。

教科書でしか見たことのない多くの寄生虫を実際に見させてもらい、多くの病変部を観察させてもらった。

立派な屠畜場だけど、使う道具は、ナイフと針金、火、水、バケツだけ。

そして安全な食肉を供給することに誇りを持つ、明るくてたくましい職員たちの目と腕が頼り。

国は道具もガイドラインも何も与えなかったので、彼らはどうすれば安全なお肉を市場に出せるか自分たちで考え、自分たちでやり方を考案したらしい。

その他の活動

いくつか活動内容を紹介したが、これらは全てが必須活動というわけではなかった。

私の地域のボランティアたちは、午前中にボランティア活動をし、午後はフリータイムおよびプロジェクトアブロード主催のイベントに参加という流れだ。

しかし、私の派遣先では、要望次第で午後のフリータイムを削り、より多くの経験をすることができた。

時には、ドローンを獣医療に利用できないか、ボランティアがより低価格で滞在でき派遣先に資金がより還元されるシステムを構築できないか、などを話し合うこともあった。

ガーナで学んだ問題点

当初の目的通り、ガーナの現状を知り、問題点が浮き彫りとなった。

まず、衛生教育の不足。

手洗いうがいをする習慣がない上に、食事は手でするので、感染症をなかなか防げない。

ゴミのポイ捨てを平気でするので、家畜はビニール袋を誤飲し、時には死に至る。

医療従事者でさえ、手を石鹸と流水で洗うことが徹底されていないのだ。

獣医師には、注射針の使いまわしに疑念を抱かない人もいる。

次に、圧倒的な獣医療物資の不足。

そして、牧場経営者の知識不足。

もし反芻動物に高炭水化物の残飯を与えたら胃内で発酵しすぎることがあると知っていたら、もしキャッサバの葉に毒があると知っていたら、財産ともいえる家畜が死ぬのを防げただろうに。

お金では買えない価値

予想に反して、私を大きく変えた体験もある。

それは、ガーナ人の優しさと陽気さだ。

彼ら彼女らは楽しそうに毎日を過ごしていて、出会ったその時から友達になれる、そんな素敵な人たちで溢れている。

ガーナにいる間、テレビなど娯楽がなく、インターネットの接続も悪かったため、私は毎日時間に余裕があり、散歩したり、子供好きではないのに子供たちと遊んだり、新しい人との出会いを楽しんだ。

週末は、乗り合いバスにゆられて多くの都市へ他のボランティアと観光を楽しんだ。

洗濯機も、水洗トイレも、お湯どころかシャワーすらない、寝室ではトカゲとネズミと同居、そんな場所で暮らしていたが、私はとても十分な生活を送れていたといえる。

今、日本に帰国して、幸福度の高い生活とはどうしたら得られるのかと、ふと思うことがある。

モノを大量に消費することは幸せだろうか、お金がたくさんあれば幸せなのだろうか。

私の大きな3つの成長

次に、本プログラムへの参加をとおして成長したことについて簡単に書こう。

英語力と獣医学的知識、問題解決力、この3点の向上だろう。

英語に関しては、獣医療ボランティアは他の同地域のボランティアプログラムよりも高度な英語力が求められたと思う。

毎日話し合い、意見を主張し、プレゼンテーションまで行った。

英語でレポートも書いた。

ガーナアクセントに慣れず、苦労も多々あったが、自分の「英語力」を思う存分試して発揮することができ、良いアウトプットになった。

獣医学的知識の向上に関しては、既に上述したとおり、日本で座学として習ったことを実学として再度学ぶことができた。

問題解決力は、日々どうすればこの短い滞在中ガーナの獣医療に貢献できるのか、何を自分はガーナに残していけるのか、ひたすら考えた結果手にしたものだ。

ガーナの現状や問題点を極力理解した上で、人の意識次第で改善できることを提案してきた。

その甲斐があってか、全てのボランティアに渡すわけではないという修了証と機関推薦状を頂き、またガーナに戻ってきてくれとも言って頂けた。

感無量である。

将来の展望と熱意

最後に、私の将来について書こう。

在学中に、獣医療物資をガーナの獣医機関に届けるシステムを構築できないかと模索している。

卒業後は、家畜などを診る大動物獣医師になるつもりだ。

ガーナで共に活動した獣医師のように、町の身近な獣医さん、でも地域全体の人の健康や経済も守っている、そんな素敵な獣医師を目指したい。

経験を積んだら、途上国で技術支援などの立場で活動していけたらと思う。

これから参加する方へ

今まで私は自由気ままな旅を好んで来たが、プロジェクトアブロードへの参加を通したことで、一人旅では得られないこともあるとわかった。

他のボランティアからそのプログラムでの出来事について聞いて、私には見えてなかったガーナがみえることがある。

ガーナとはいえ、地域によって宗教も環境も発展具合も様々である。

この体験談を通して、少しでもガーナに興味を持ち、実際に足を運んでもらえたら幸いだ。

私のボランティア活動に関わった全ての方々に、この場をお借りして感謝したい。

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ガーナで獣医療 前田沙優里

この体験談は、主観に基づいて綴られています。

その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。

ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。