「何となく」から即決

私は今回、大学の夏休みを利用して三週間タンザニアで助産のインターンシップに参加した。

参加したきっかけは友人の紹介であり、初めはいつ行くかも、行く国も、何のプログラムに参加するかも特に決めておらずなんとなくホームページを眺めていた。

そこで、「タンザニアで助産のインターンシップ」のプログラムに目が留まり、なんとなくアフリカという言葉にひかれてその場で申し込んだ。

そのため、参加半年前に申し込んだときには、タンザニアがどんな国なのか何も知らず、行くと決めてから色々調べはじめ、スワヒリ語の勉強も始めた。

助産のプログラムにしたのは現在看護学生であり、将来的には助産師の資格も取りたいと考えていたためである。

参加を決めた半年前から出国までは、スワヒリ語の勉強、医療英語の勉強を少しではあるが継続して行った。

結局大学の勉強が想像以上に忙しく、期待していたほどスワヒリ語や医療英語を身に着けることはできなかったが、実際に現地に行ってみると勉強しておいてよかったと思える場面も多々あった。

3週間の活動

現地ではホームステイで一日5時間アルーシャの総合病院の産科の見学をするという生活だった。

月曜日から金曜日は朝7時ごろに起きて、9時前にトゥクトゥクがホームステイ先まで迎えに来て病院まで連れて行ってくれた。

14時まで病院で見学をしたり、簡単な作業をやらせてもらったりして、その後は家に帰ることもあれば、アルーシャのカフェや美術館、マサイ・マーケットなどを観光することもあった。

疲れすぎない程度の勤務時間であり、観光も満喫することができる生活だった。

土日は、サファリツアーとザンジバル旅行にそれぞれ一泊二日で行くことができた。

私を変えた二つの学び

この三週間の生活は私にとって本当に濃い時間であり、感じたこと、思ったことを一言に集約するのは難しいが、今回得た学びを二つの観点でまとめたいと思う。

まず、一つ目の学びは、生きやすさと生活の便利さは違うということだ。

私にとっては、日本とタンザニアを比べた時、日本のほうが生活は便利だが、タンザニアのほうが生きやすい土地だった。

生活の便利さという面でいうとタンザニアには洗濯機も掃除機もなく、シャワーは水圧が弱くぬるい水しか出ず、電車もないので、日本での便利な生活に慣れてしまっているとやはり不便を感じた。

しかし、その点を踏まえてもタンザニアに住みたいと思うほどタンザニアが好きになるような居心地の良さがあった。

それは、ポレポレで優しい文化である。

ポレポレは「ゆっくり」を意味するスワヒリ語で、タンザニア人は驚くほどポレポレだった。

集合時間への遅れは日常茶飯事で30分までの遅れであれば連絡もしない。

日本人からするとありえないことだが、この文化のおかげで職場でのピリつきが一切なく、何かトラブルがあっても、落ち着いてポレポレでやっていこう、という雰囲気があり、これが私にとっては居心地がいいものであった。

日常生活においてもスケジュール管理があまりなく、のんびりストレスを感じずに生きられればそれでいいよね、というような雰囲気がとても生きやすかった。

今まで、便利さばかりに目を向け、日本以上に過ごしやすい国は他にないのではないかと考えていたが、便利な機械がなくても日本以上に生きやすい文化があることを知り、考え方が変わった。

二つ目の学びとして、医療現場で学んだことを書きたいと思ったが、医療現場に関してはこのインターンを通して逆に正解が分からなくなることのほうが多かった。

発展途上国の医療問題が、単純なものではないことを痛感させられる経験だった。

今までの私は安易に発展途上国では医療技術と物資が不足しているからそれを支援すればいいのだと考えていた。

しかし、毎日10件以上のお産がある現場で、医療従事者が不足してほったらかしの状態で出産してしまうお母さんや、赤ちゃんの体重を測るシートが足りないから手袋の箱を開いて代用する様子を見て、そう簡単に解決するものではないと気づいた。

確かに医療技術と物資が足りていないのは事実だが、技術を教えるとしても医療従事者も足りておらず、それには国全体の貧困問題や学校へ行ける子供の少なさも関わる。

出生数が多すぎて寄付だけでは物資不足をカバーできないことも感じた。

帰る際に当たり前のように寄付を要求され、寄付に頼り切っている病院の危うさも感じた。

この3週間だけでは、問題の大きさを痛感しただけで何も解決策は見つからなかった。

また、まだ私は看護学生であるため医療知識や現場での経験が不十分だったこともあり、日本の現場との違いを十分に分析することができなかったことも心残りだ。

まだまだやりたいことがある

正直、タンザニアに行く前は3週間もタンザニアでの生活に耐えられるか不安だった。

しかし、実際に行ってみると3週間では足りなかった。

この3週間で、タンザニアの文化、医療現場、観光地をたくさん見て学ぶことは本当に多かったが、まだまだ、行ってみたかった場所や、やり残したこと、タンザニアについて分からないことは多くある。

タンザニアの穏やかなで細かいことを気にしない生活スタイルも心地よく、帰りたいと思うことはなかった。

実際に行ってみないと分からないことが沢山あるということを実感した3週間だった。

この経験のおかげで人生の選択肢が何倍にも広がったと思う。

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タンザニアで助産師インターン 中村葉子

この体験談は、主観に基づいて綴られています。

その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。

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