建築への興味と憧れ
幼い頃から建築に強い興味や憧れを持っていたものの、具体的に将来なにがしたいかが決まらず、進路決定に悩んでいた。
そこで、実際に家づくりを体験することで何らかのヒントを得られるのではないかと思い、参加した。
また、英語のスキル向上も目指し、活動場所をフィリピンに決めた。
渡航前は、友達はできるのか、ホストファミリーは優しいか、トラブルに巻き込まれないか、空調なしで過ごせるのかなど、とにかく不安でいっぱいだった。
建築ボランティアの実践
初日はブロックを作った。
土、セメント、水を混ぜて型に流し込み、形になったものを運んだ。
まだ固まっていないためもろく、持ち上げようとして壊してしまった。
2度目は成功したが、力の入れ方が想像以上に難しかった。
2日目から本格的に作業が始まった。
昨日作ったブロックを積み上げて、家の壁を作った。
ただ積み上げるだけではなく、高さが均一になるよう、チップを挟み込んで微調整する必要があった。
次に、ブロックの穴にセメントを流し込み、ブロックを固定した。
2人1組の共同作業で、私はイギリス人のレクシーと一緒に行った。
英語でコミュニケーションをとることができたが、誤解を生まないよう表情にも気を配った。
その後は、ひたすらセメントでブロックの隙間を埋めていった。
個人的にはこの作業が最も好きだった。
セメントは地元の大工が作ってくれたが、次第に自分で水分量を調節するようになった。
ブロックや土、石を運ぶのも大切な仕事だった。
手押し車に積む作業は力がいる仕事だったので、アメリカ人の男子が手伝ってくれた。
2013年、あれから
フィリピンは機械化が進んでおらず、建築のほとんどの工程が手作業だった。
そのため、作業は想像以上に時間と労力を要した。
私は2013年の台風の復興としてのボランティアをやったが、現在はその痕跡はほとんど消えていた。
2013年、ボゴシティは甚大な被害を受けたというから、その復興はかなり大変だったと思う。
実際に作業した後だから、身に染みてわかる。
さらに、犠牲者も数千人にのぼったというから、犠牲者の家族は今も悲しんでいるだろう。
初めは台風のことなどすっかりと頭から抜け、期待に胸を膨らませて作業を始めたが、被災者の心の傷を想像し、心情を慮ることの大切さに気づいた。
人に恵まれたフィリピン生活
私は本当に家族と友達に恵まれた。
家族は、全員温かく迎え入れてくれた。
体調にも気を配ってくれて、おいしいご飯を作ってくれた。
洗濯の仕方など、分からないことは全て丁寧に教えてくれた。
夜はアイスの店や海に連れていってくれたし、私がタピオカを飲みに行きたいと言うと、連れていってくれた。
この家には私以外に3人の日本人女子がいて、全員すごく優しくて、気が合って、大切な友達になった。
青森、千葉、岡山と他地域から集まっていた。
日本の中でも、地域によって様々な違いがあり、新鮮だった。
私は岡山に住んでいるのだが、今回初めて自分の話し方に訛りがあると知った。
ルームメイトは私より1学年上だったが、その差を感じずに接することができ、なんのストレスもなく、ホームシックになることもなく、楽しく過ごした。
洗濯は、すすぎや脱水が手作業だったので、毎回1時間以上かかり、とても大変だった。
食事は美味しかったが、野菜がほとんどなかったのが辛かった。
また、お米が日本のものとは少し異なり、馴染めなかった。
暑さには苦しんだが、1週間も経てば慣れていた。
かけがえのない出会い
一番のできごとは、かけがえのない親友ができたことだ。
シンディアという上海出身の子で、同じ建築プログラムだった。
私は何度か上海に行ったことがあったので、それをきっかけに話すようになった。
彼女はインターナショナルスクールに通っていて、英語が堪能だった。
イギリス英語とアメリカ英語の違いを教えてくれたり、私の英語を添削してくれたりして、とても勉強になった。
毎日リバーシやパズルをし、お互いのことを沢山話した。
今もずっと連絡をとりあっている。
お互いの街に招待する約束もした。
私の身近にはいなかった新しいタイプの人なので、とても良い刺激になった。
もっと英語を勉強しておけば、彼女とスムーズに会話ができたのにと後悔する一方、今まで英語を勉強してきたおかげでこんなにも仲良くなれたのだと、嬉しかった。
次に彼女と会う時までにもっと英語を勉強して、スキル向上に努めたい。
ひしひしと感じる成長
今回の経験で私が得たものは、5つだ。
1つ目は、進路の決定だ。
自分が大人になって何がしたいのか、未来のビジョンが見えてきた。
2つ目は、英語力の向上だ。
常に英語でどのように伝えようかと、頭を回転させていた。
3つ目は、視野の拡大だ。
多文化との交流により、自分や日本の立ち位置を俯瞰することができた。
4つ目は、コミュニティの形成だ。
先程述べたように、長く付き合っていきたいと思える親友ができた。
また、現地のスタッフやホストファミリーは、皆さんとても優しくしてくださった。
またフィリピンに戻って再会したい。
5つ目は、自信だ。
1人で海外に渡り、現地の人とコミュニケーションをとりながら生活できたということが、自分にとって大きな自信となった。
日本の技術を世界へ
建物ができ上がっていく過程にやりがいを感じたが、今回は微力な貢献しかできなかった。
フィリピンの建造物や橋は、日本の企業やODAが多くを手掛けていると知った。
私も、大人になったら建築士としてそれに参加して、より多くのフィリピンの方々の力になりたい。
また、現地の建物は至る所に若干のズレや欠陥があったので、日本の整った建造物は当たり前ではないと気づいた。
それを変えていくには、現地の大工、使用者の意識を変え、高める必要がある。
日本の丹精なものづくりを世界に広めて行きたい。
これから参加する高校生へ
私は、大学の進路決定が迫るこのタイミングで参加できたことに、深い意味を感じています。
将来の自分のビジョンが見えてきました。
また、世界各国から集まった人達とコミュニケーションを図れたことで、視野が広がり、刺激になりました。
今回の経験と広がったコミュニティは、私の大切な財産です。
ぜひ挑戦してみてください。
この体験談は、主観に基づいて綴られています。
その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。
ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。