参加の経緯

私は現在、大学の建築学科を目指している1浪生です。普段は志望大学の入試に向けての対策をしています。

一方で、3月4月、どこかぼんやりとしたまま毎日淡々と過ごしてしまっているような気がしていました。

1年後に大学に入るという遠い先の目標に、まだ実感が持てなかったのかもしれません。

このままでは貴重な1年が味気なく終わってしまう、どうせならここでちょっと自分を試してみてもいいかもしれない、そんな思いから、夏休み期間2週間程度でできる活動をインターネットで探しました。

いろいろ見ていると、海外のインターンやボランティア活動が目に入りました。

元々、異国情緒が好きで、外国語の勉強や世界中の自然、街並みの写真集や映像を観るのが趣味の1つだったので、そういった活動に大変惹かれました。

さらに、私は建築に興味があったことから、建築関連に絞って海外ボランティアを探していったところ、プロジェクトアブロードと出会いました。

もともと、建築のボランティアをやっている団体は限られていましたが、その中でもプロジェクトアブロードは、渡航前や現地でのスタッフのサポートが手厚かったこと、世界中からの参加者がいること、活動期間を自分で決められる柔軟性があることが魅力で、それらが決め手となり、参加を決意しました。

建築プログラムには、タンザニアとネパールが選択肢としてありましたが、遠い大陸アフリカにどこか憧れがあって、タンザニアにすることにしました。

申し込み前には度々オンライン相談を行っていただき、不安点を解消してから参加に踏み切ることができました。

渡航前準備

参加を決めたのは渡航1ヶ月半前ほどとかなりギリギリでした。

ですが、保険や航空券はプロジェクトアブロード紹介の代理店でスムーズに手続きできました。

また、タンザニアについての情報収集もしました。

図書館に行ってもタンザニアについての本はほんの数冊しかなく、日本にとってはまだ未開の土地なのかと少し驚きました。

そのほか、地図専門店に行って海外出版社のガイドブックを購入したり(一般的な書店では取り扱っていません!)外国のウェブサイトの記事を読んだりと、この時点ですでに海外に一歩踏み出した気分で、ワクワクしていました。

さらに、現地では英語が通じるものの、日常生活はスワヒリ語や部族の言葉が主だと聞いていたので、スマホアプリでスワヒリ語の勉強も毎日少しずつやっていました。

これが現地で相当役に立ちました。

このように、渡航前にもいろいろと準備するべきことがあり、それに時間を割く必要がありましたが、1つ近い目標ができたことから、それをモチベーションに受験対策の方も以前より計画的に、集中してできるようになりました。

現地での活動

建築プログラムでは、マサイ族の子どもたち(3〜5歳)が通うナーサリースクールの塀の建設や新しいゲートの設置をしました。

機械はなく、水や砂、土砂を運ぶのも、セメントを混ぜるのも地面を掘り起こすのも全部人力。

自分たちを囲うスケールの頑丈なものを作り上げることがいかに大変かを身をもって実感しました。

最初の1、2回は、重い水やレンガを運んだせいで腰痛や筋肉痛でしんどかったです。

日本にいたときは割と体力には自信がありましたが、現地の作業員の方や手伝ってくれた子どもたちの仕事っぷりを見ると、足元にも及ばないものだと反省しました。

でも、こうして機械を使わず全部手作業でやるからこそ、塀の基礎の作り方や、セメントがどのようにして出来上がるのか、それぞれの素材や部品の役割などを直感的に学ぶことができました。

このようなことは、大学でもう一度学ぶことになると思いますが、ここで得た経験によって、単なる知識を実感として受け止められるのではないかと期待しています。

ちなみに、私が参加した時期は、同じく日本からのボランティアが1名と、現地の作業スタッフが1名、その助っ人で1、2名というメンバーでした。

日本人の方と一緒に通勤、活動できたのはとても安心でしたし、現地の方がスワヒリ語を教える代わりに私たちが日本語を教えるといった謎の師弟関係ができて、楽しかったです。

ただ、作業内容は1から全部教えてくれるわけではなく、その都度質問したり、次何をすれば良いか聞いたりという積極性が必要でした。

最初はよくわからないまま進めていて不安でしたが「わからないことは聞く」ということを覚えてからはできる作業の範囲も広がり、充実した活動ができました。

それに、現地の助っ人の方は、スワヒリ語しか話さないので、初めはコミニュケーションに苦労しましたが、基本的な挨拶は日本で学んでいたし、活動中に覚えた単語をステイ先に戻ってから復習したことで、最終的にはスワヒリ語だけでも共同作業ができるようになって、向こうも喜んでいたし、私自信も理解できることが増えていく楽しさがありました。

建築という大きなプロジェクトを遂行するには他人とのコミュニケーションが不可欠です。

今回、言語すら違う環境で協力して建設作業ができたのは、まさに「この上ない」体験だったと思います。

子どもたちとのふれあい

建築の活動の前後にはマサイの子どもたちと遊ぶ時間もありました。

彼らは本当に元気いっぱいで、最初来た時は圧倒されました。

その一方で少し考えさせられる部分もありました。

彼らは決して、かっこいいおもちゃを持っているわけでもなければ、好きな洋服を着られるわけでもありません。

むしろ、十分に綺麗な水や栄養のある食べ物でさえも貴重な環境で暮らしています。

にもかかわらず彼らは、学校に行くこと、友だちや先生、私たちボランティアと遊んだり勉強したりすることに、とても大きな幸せを感じているように見えました。

私がただ縄跳びを教えてあげただけ、ただ石ころでおままごとのようなことをやっただけであんなに笑顔になってくれる子どもがいるんだと。

私は日本に住んでいて、綺麗な設備や便利な機器が当たり前の、保育器のような環境で過ごしてきて、いつも最新のデバイスやおしゃれな服など、「ないもの探し」をしていたように思います。

でも、こうしてマサイの子どもたちとのふれあいを通して、今自分がこうしていられること、「今あるものへの感謝」を忘れてはいけないと気づかされました。

幸せは追い求めるものではなく、それは目の前にあって気づかれることを待っているものだと、そう感じました。

まあ、そんな真剣なことは、彼らと遊んでいる間は全くもって吹き飛んで、一緒に日本の歌を歌ったり、鬼ごっこをしたり、童心にかえって遊びました。

建築の活動だけでなく、こうして子どもたちとのふれあいができたのは、正直予想外のことでしたが、とても大切なことを学べた時間だったと思います。

ただ、彼らはスマホ(現地語ではsimu)が大好きで、悪気はなくともよく取られて勝手に遊ばれるので、ほどほどに注意すべきです。

日常生活

私は、定員4名のシェアルームがあるホストファミリーのお宅で生活しました。

初めの1週間はオーストラリアからの2人と一緒でしたが、後半の1週間は私だけでした。

初めの2人は、どちらも医療ボランティアの2週間目で、国も同じなのですでに仲良くなっていて、正直その輪に入っていくのは大変でした。

大学や医療の話題になると訳がわからず、一緒にディナーを食べていても、おいてきぼりになっていました。

なんとかしないとと思い、まずは、どちらかが1人のタイミングを見計らって、声をかけ、どんな仕事をやっているのかや週末どこに行ったかなどを聞いてみました。

2人きりなら何も知らない私にも丁寧に説明してくれるし、とても話しやすかったです。

こうして、あっという間の1週間、多少なりとも2人との距離を縮めていけた気がします。

1人になってからは、ホストファミリーとの会話が増えました。また、面白いことに、私だけになってから、家族との公用語(?)をスワヒリ語にしようとホストファザーが言って、躊躇なくスワヒリ語で色々話しかけてくるのです笑。

最初は「・・・?」って感じでしたが、ホストブラザーやシスターが英語でフォローしてくれたので、基本的な挨拶や動詞などたくさんのスワヒリ語を覚えました。

これが建築の活動にも大変役立ちました。

そして何より現地語を話せばみんなが喜んでくれ、家族の一員として馴染めている感じがしました。

私にとって、タンザニアでの2週間は毎日が新鮮でした。

日本とはまるっきり環境が違っているし、しきたりも異なる。

にもかかわらず、過ごしていくうちにどこか愛着が湧いてくるような、アットホームな感じさえしてきたのです。

渡航前は「タンザニアって、サバンナが広がっていてマサイ族が暮らしていて、、、」くらいにしか思っていませんでしたが、予想以上に都市化が進んでいて、自分の頭がアップデートできていないことに気がつきました。

一方で、急速な都市化は一方で様々な問題を引き起こしています。

例えば、道を歩くと、ゴミが散乱していたり、車の排気ガスや砂埃などで空気が汚れていたり、強度が十分でないようなプレハブ小屋が立ち並んでいたり。

慣れてくると、こうした負の側面も見えてきました。

でもこれはこれで学びの一つだと思います。

スケジュール

平日は基本、マサイスクールに建築の活動に行きます。

朝7:30ごろに家を出て、ダラダラというバスに乗り、学校の最寄りからは別の車で先生や子どもたちと一緒に校舎へ向かいます。

活動をするのは10:00〜15:00までですが、日によってかなり変動はあります。

家からバス停までは1人で歩くので、色々声をかけられたりしますが、現地語で挨拶したり、しつこかったら無視したりすれば問題ありません。

基本みんなフレンドリーで、単に見慣れない人に対して好奇心が旺盛なだけです。

毎週木曜はsocial dinnerがあり、他のボランティアの人たちと知り合うことができます。

また、スワヒリ語レッスンや料理教室など、プロジェクトアブロード主催の多種多様なイベントがありました。

そして、私には2回週末がありました。

1回目は、ガイドと一緒に、市内のマーケットやマサイの民芸品ショップをみてまわったり、コーヒー農園に行ったりしました。

人では到底入りにくいところでもガイドと一緒なら安心して見れるので、よりディープでローカルなまちを体感できました。

どちらも旅行サイトから簡単に手配できます。

2回目はサファリに行きました。

こちらはプロジェクトアブロードを通して手配できます。

バッファローの大群やライオンの狩の様子が間近でみられて、圧巻でした。

個人的な考え方として、2回の週末のうち、一回目は文化系、2回目は自然系を満喫したいと思って計画しました。

これから

私はタンザニアでの2週間を経て、さらにこの国への興味が沸きました。

特にインフラや住宅等の建造物などはまだ発展途中であり、創造の余地があります。

一方で、この国の人たちは本当に温かく迎えてくれるし、子どもたちも積極的でエナジェティックです。

タンザニアのローカルに触れ、いいところ悪いところどちらも学べたからこそ、将来的にタンザニアをはじめとする海外での建築の仕事をしてみたくなりました。

その時は、日本の方法をそのまま使用するのではなく、現地の人たちとコミュニケーションをとって、その土地柄に適した方法で進めていくことが肝心だと、今回の経験を通して感じました。

やはり一番大切なのは相手のことを知ろうと努力することだと思います。

これは、海外での活動に限ったことではなく、たとえ日本の一般住宅に対しても、そこに住む人たちのライフスタイルや要望をしっかりと聞いて、その人たちへの最適解を提案する必要があります。

決して、これが流行りだからとかこれが私のスタイルだからとか、そういった画一的な考えを押し付けてはいけないと思います。

今回学んだたくさんのことを忘れずに、まずは大学に入ってしっかり建築・設計を学び、世の中にありふれたものではなく、ある地域、なんならある人にとってだけでもいいから、その人にとっての唯一無二の空間を設計することを目標にしたいです。

そのために、そこに過ごす人とのコミュニケーションを大切にし、誰よりもその人のことを知ろうとする姿勢を持ち続けたいと思います。

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タンザニアで建築の海外ボランティアに取り組む岡崎百花さんと仲間たち

この体験談は、主観に基づいて綴られています。

その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。

ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。