摂食障害から得た目標

プロジェクトアブロードと出会ったのは、2019年、私が高校1年生の頃でした。

中学3年生の頃に摂食障害を経験した私は、医師を目指すようになり、将来像を固めるため、医療現場に実際に立ち入ることが出来る機会を探していました。

さらに、摂食障害の経験から、社会的背景が人々の健康に非常に大きな影響を与えることを学び、SDGsや途上国支援に、強い興味を抱いていました。

日本国内では、高校生対象の医師体験を見つけるのはなかなか難しく、セミナーなどのイベントには参加していましたが、「実際の現場を見たい」と、不満が募っていました。

そんな中、海外に視野を広げてみたところ、プロジェクトアブロードの、医療&ヘルスケアの高校生向け海外ボランティア募集を見つけ、ワクワクしたのを覚えています。

スリランカに惹かれた理由

活動国の決定に際して、まず詳しく調べたのがスリランカでした。

これは、幼い頃からリプトンの紅茶をよく飲んでいて、強く印象に残っていたからです。

その中で、親日国であること、公的な医療が無料であること、そしてアーユルヴェーダという伝統医療があることなど、沢山の魅力がある国だと知り、スリランカに惹かれていきました。

高校では、授業の一環で、スリランカの医療格差を題材として、探究活動を行うようになりました。

さらに現地に渡航したいという思いは増し、「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」の、高校生コース6期生の募集に応募して、準備を進めていましたが、コロナにより渡航が不可能になりました。

大学生になり、コロナが落ち着いてきて、高校生の頃の夢をリベンジしたいという思いが高まりました。

「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」の大学生向けプログラムに応募しましたが、2次選考の面接で落ちてしまいました。

1ヶ月以上自由な時間を取れる最後のチャンスであったため、自費で渡航することを決めました。

実際の活動

私は、National Hospital Galleにて、Emergency Trauma Center(救急外来)で2週間、Pediatric Ward(小児科病棟)で1週間、General Medicine Ward(総合内科病棟)で1週間の、合計1か月間実習をさせていただきました。

午前中は8:30ごろに病棟に向かい、現地の医学生の方々、そしてドイツなどから来ていた留学生の方々と一緒に実習させていただきました。

12:00ごろにお昼を食べに家に戻り、そのあとは、経験した症例について復習したり、買い物に出たりする自由時間としていました。

病院とホームステイ先の家は徒歩15分ほどの距離でした。

ホストファミリーはとても親切で、毎日の生活をサポートしてくれるだけでなく、行くべき場所をアドバイスしてくれました。

週末は、スリランカの様々な場所を旅しました。

Galleのマーケットで買い物をしたり、人生初めてサーフィンをしてみたり、砂浜に取り付けられていたブランコに乗って絶景を眺めたり、お寺やモスクを訪ねたり、大雨でびしょびしょになったり、サファリに行ったり、電車に乗ってみたら3時間も遅延してしまって、電車が動き出すまでの間、現地の方々と歌を歌ったり、ゾウの孤児院に行ったり、茶葉の工場に行ったりと、本当に多様な体験をさせていただきました。

現地のウミガメ保護施設では、プロジェクトアブロードのプログラム参加者の交流会が行われました。

生まれたばかりの赤ちゃんガメを海に放したり、海岸の清掃を行ったり、世界中からの参加者と交流したりすることができました。

想像をはるかに超えた学び

最初は「高校時代の夢のリベンジ」と捉えており、実習の中で医学に関する知識を身に付けることがもっとも大きな目標でしたが、日々の生活の中で現地の方と関わる中で、想像をはるかに超えた、自分の価値観を大きく変える学びがありました。

その中から、より印象的だったものを選びました。

長くなりますが、6項目記載させていただきます。

1. 海外の医学生の英語のレベルの高さと、自分の英語のレベルの低さに驚かされた

スリランカの学生さんは英語で医学を学んでおり、また医療の記録も英語でとられています。

その流暢さからは、どれほど英語の学習に時間をかけたのかが伝わってきました。

途中で出会った、ドイツの医学生も、母国では医学を英語で学んでいるわけではないにもかかわらず、医学用語もスラスラと出てきていました。

英語が口から出てくるスピード感の違いを感じ、衝撃を受けるとともに、身が引き締まりました。

自分の英語のレベルの低さは、人と比べたことによってだけでなく、自ら英語を話す中でも感じました。

皆さん「上手よ」と言ってくださいますが、自分の気持ちがこれほど表現しづらく感じる経験は、日本では出来ないと思います。

英語が分からないと、質問も出来ずに話を広げることが出来ないため、もどかしい思いをしました。

2. 言葉に頼らないコミュニケーションを経験できた

1つ印象的なエピソードがあります。

救急外来を受診し、お腹の痛みを訴えてベットに寝かされていた患者さんがいました。

身体的な状況に関心を寄せる医者や医学生に囲まれ、全身をくまなく診察され、苦しそうな表情をしていました。

スリランカの現地語であるシンハラ語を理解できない私は、患者さんが何と言っているかは分かりませんでしたが、表情を使って頑張って「苦しいですね、頑張って」とアピールしながら目を見つけていました。

そうしたら、その場から移動することになった時、手を伸ばして私の手を握ってくださいました。

「人と向き合うことは、言葉なしでもできる」のだと、今まで言葉では認識していましたが、それを実体験でき感動しました。

3. スリランカの方々のマインドを見習いたいと思った

元々、スリランカへは、「医療水準が低い場所の医療を見たい」「医療格差を無くすにはどうしたらいいんだろう」という気持ちを持って飛び込みました。

確かに、現地で使われている機械は古く、高度な手術は出来ないと言われていましたが、そのことが不幸せに直結しているとは思えませんでした。

これは、最初の救急外来見学が、「スリランカ初の救急外傷センター」であったために、比較的高度な医療が提供されていたからかもしれません。

ですが、それ以上に、スリランカの皆さんの価値観が影響しているのではないかと考えています。

スリランカの皆さんは、自然を敬い、過剰な搾取や線引きをせず、自然体で暮らしていると思いました。

自然の恵みに感謝し、動植物ともお互いに助け合おうとする精神を感じました。

多くの方々が、足るを知り、今の自分が持っているもの焦点を当てているように感じられました。

予定を組んでそれをこなすために焦るのではなく、その状況に臨機応変に対応するおおらかさをお持ちの方が多いように感じました。

現地の皆さんの寛大さに触れ、自分の器の小ささと知識、能力のなさを再認識させられました。

私はどちらかというとせっかちでケチ、計画を立ててそれに沿って動くことで安心を得ているというタイプの人間なので、スリランカの皆さんのようなマインドを忘れずにこれから生きていけたらいいなと感じました。

4. 人生初の1人旅がスリランカでよかった

スリランカの皆さんは、気さくに人に話しかけてくださいます。

また、普段は少し怖い表情をしているように感じることもありますが、こちらが笑いかけると笑顔を返してくださいます。

私にとっては、こんなに長く、しかも海外を一人で旅するのは初めてでした。

1人の時間が長いかと思いきや、常に私の周りには新しく出会った誰かがいました。

大抵向こうから目を向けて声をかけてくださいました。

そして、私は知らない人と話すことに抵抗がないタイプで、かつ1人だからこそフットワーク軽く行動できたので、それに気軽に応じることができました。

こうして新しい関係性を築くことができ、現地の方々の輪に溶け込むことができたのではないかと思っています。

今まで、一人旅なんて絶対に寂しくてできないと思っていたのですが、寂しいというより騒がしい旅となりました。(笑)

5. 新たな自分を発見した

どんな場所に旅に出ても同じことを感じるのかもしれませんが、「新たなものに触れて改めて自分について解像度が上がる」ということを改めて感じさせられました。

全く違う環境に身を置き現地の方々と交流しながら、そこでゆとりのある時間の中で自分自身を見つめ直しました。

自分が日本にいる時とは違った視点で見られること、評価されていることを強く意識し、日本では感じていなかった、自分の長所や短所が浮き彫りになりました。

日本ではシャイな方ではない、むしろかなりオープンな方だと思っていましたが、スリランカでは、何度もシャイだよねと言われました。

また、何だかエネルギーに溢れてるね、笑顔が素敵だねと声をかけていただきました。

普段、如何に自分が狭い世界で生きていたのかを知り、また、自覚していなかった点を褒めていただいて、少し自信がつきました。

6. 効率的な学び方を知った

今回、実習を半日、復習を半日というスケジュールにしたことで、座学だけで学んでいた日本での学習よりも、効率的に記憶に残る学びができました。

体験した内容と情報を結びつけて覚えるのと、文字面をなぞるだけで覚えようとするのでは定着度が桁違いだと思っています。

五感を使って学ぶことの重要性を改めて認識しました。

一方で、その意味や価値が分からないままにただただ体験するだけでは、そこから得られる学びはそう多くありません。

今回はとても良いバランスで学習できたと考えています。

これから参加する方へ

知らない土地に飛び込むことは、非常に不安なことだと思います。

ですが、その不安を乗り越えて、実際に現地に行ってしまえば、意識せずとも多くの学びを得ることができると思います。

準備や現地での不安は、スタッフの皆さんが親身になって相談に乗ってくださいます。

どうか心の赴くまま、興味を持ったことに思う存分取り組んでいただけたらと思います。

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スリランカで医療 結城舞

この体験談は、主観に基づいて綴られています。

その時の現地の需要や活動の進捗状況、参加時期、参加期間、天候などによって得られる経験が異なりますので、あらかじめご了承ください。

ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。